「関宿」逍遥

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関宿逍遥


 「関西近郊ローカル線の旅」を始めた。家内との二人三脚。ローカル線の定義は明確ではないが、一応、JRの地方交通線をイメージしている。ご存じの方もおられると思うけど、今の日本にはローカル線がすごく多い。新幹線が通ると、たくさんの支線がローカル線となる。しかも、”自立自走”などと言われると経営も大変だ。しかし、沿線には田園風景が多く残され、しかも中には意気軒昂な地方都市もある。あまり遠いところは難しいので、日帰りが可能な関西圏のローカル線の旅を楽しみながら地方で頑張っている都市や町を訪ねてみようと思っている。

 ということで、先日、大阪北摂のわが家から京都経由草津線・関西線で三重亀山の関宿を訪ねた。草津線の沿線は水田が広がりシロサギ・アオサギを多く見かけた。たいていは水田に佇んでいて、のんびり見えるけど、多分、必死にエサを探しているのだろう。何を食べているか調べたところ、どうやら標的はアマガエルのオタマジャクシらしい。アマガエルは田植えが終わると苗に卵を産みつける。6月中旬近くには卵から孵ったオタマジャクシが水田で泳ぎ始める。そのオタマジャクシを狙っているのだ。

 そんな車窓の風景を楽しんでいるうちに関駅についた。「鈴鹿の関」で有名な関の駅頭には「関宿重要伝統的建造物群」の標識があって、東西追分の間の約2kmの街道筋が昔の宿場の町並みをとどめている。なかでも、和樽や桶を造る「桶重」は4代目の親方が今も樽や桶づくりを続けていて、ぶらっと訪ねた私たちにも樽づくりの面白さ、難しさを話してくれた。木曽五木の ヒノキ・アスナロ(アスヒ)・コウヤマキ・ネズコ・サワラに秋田のスギが主要な材で贅沢な柾目どりで切り出される。においのきつい材は味噌や醤油樽には向いていないということだが、味噌・醤油・酒づくりに欠かせない麹菌や乳酸菌の住処に木材の材質はまたとない役割を果たしている。樽づくりの道具がいろいろ並んでいる。カンナひとつでも樽の大きさに合わせて様々なカーブをもったものが揃っていて、それらを適宜、使い分けながら作業を進めるという。

 その他にも旅籠、和菓子屋、酒屋(地酒は「鈴鹿川」)などの店やが並んでいて、それぞれ商売をするうえでの昔からの工夫がいろいろなされている。

 帰りは関西本線天王寺経由だったが、沿線の木津川沿いの景観は草津線以上の素晴らしさだった。6月初旬だったが、車窓を通して射し込んでくる夕日も肌に心地よく、景観を眺めながらの銘酒「鈴鹿川」の味わいはひとしおの感があった。ローカル線の旅は手作り感があり、折々に「天地の恵み」の素晴らしさを教えてくれる。しかも、特徴のある地方都市に接していると、われわれに「ひとそれぞれ、工夫して面白くやりなさいね」と語りかけてくれているようで元気をもらえるのが嬉しい。